この記事は Retty Part1 Advent Calendar 2022 の18日目の担当内容です。
Part2もあります。
みなさん、ユーザーインタビューしてますか?
Rettyでは数年前から日常的(週〜2週に1度の頻度)に実施しており、主にプロダクトマネージャー(以下PdM)やデータアナリストが中心にユーザーインタビューを行っています。私自身は今年からインタビューアーに挑戦している、そんな状況です。
最初慣れない頃は
- オープンに聞けるか?
- フラットに聞けるか?
- 時間内に質問項目を聞けるか?タイムマネジメントは適切か?
など、インタビューテクニックが気になっていました。結果、インタビュー後の考察時間にもプロダクトに反映できそうなインサイト・仮説を得られたかについてはあまり議論できず、チームとしても各メンバーのテクニックの振り返りが中心になってしまい、学びが薄い期間が一時期ありました。
しかし、時間を掛ける部分を変更したことで、得られる学びが数倍変わったと思います。
ユーザーインタビューは探索型や検証型やプロダクトに対する健康診断など様々な目的があれど、そのいずれの型も
- 目的の設定
- インタビュー対象者のリクルーティング選定
- 質問項目の設計
- トークスクリプトの作成
- 結果の考察
と各フローを辿ります。そこで、インタビューテクニックよりも、これらのインタビューの前後フローにいかに準備をかけるかで、得られることは数倍変わることを実感しました(もちろんテクニックは持っているに越したことはないです)
今回は検証型として実施し、結果として
- 役員陣も交えた上でサービスモデルとして検討したいインサイトを得られたこと
それとは別に
- チームレベルで、プロダクト施策として検証したいインサイトが得られたこと
と大きめの粒度のインサイトが2つ得られました。
この記事は、比較的初心者向けにユーザーインタビューから学びを得るために実施して良かったことについて書きたいと思います。今回は検証型を例にしたお話しになります。
インタビュー背景
今年の夏過ぎから秋頃の約4ヶ月間掛けて、あるKPI(NSM)のグロースを探索するイシューをPdM(エースの@i_dayu_to)と二人三脚で進めていました。
進め方として、過去のインタビューを参考に、「今後Rettyがユーザーに提供すべき価値(ユーザーの便益/独自性)」をKA/KJ法で分析/注力すべき価値を洗い出し、集約する方法で探索を進め「この方向性で行けば、NSMは大きくグロースするのではないか?」と仮説を作っていきました。
その仮説が、結果としてKPIを大きく伸ばせるポテンシャル(ボリューム×質)があるかを検証するために、今インタビューを実施しました。
ここからは、実際に実施して良かった4つ+αのTIPSをご紹介します。
学びを最大化するために実施した4つのコト+α
1/ リクルーティングでできるだけユーザーを絞る
- ステップ:リクルーティングの選定
検証や探索の目的が決まれば、具体的にインタビューの実施に向けて動き出します。
次にリクルーティングがあると思いますが、条件をどこまで絞ってリクルーティングするか迷う事があると思います。
Pros
- 目的にあったユーザーにインタビューできる確率が高まる
Cons
- 対象ユーザーが狭まり、インタビューできる量が少なくなる
それぞれPros/Consはありますが、両方経験した結果、
検証型
- できる限りユーザーの選定条件を絞り込み、学びを得るための不確実性を減らす
- インタビューに割く期間:数週間
探索型・健康診断
- 絞り込みすぎず、できるだけ継続することを目的とする
- インタビューに割く期間:特に決めない
が個人的にはしっくりきています。
今回は検証型だったので、選定条件をできるだけ絞り、4名のユーザーにインタビューを行いました。この人数が多いか少ないかは目的によって異なると思いますが、この人数でも共通点が見い出せ、仮説のユースケース・提供価値・特徴等を言語化ができました。
もし、最初のリクルーティング人数が少なくて不安な場合は、一緒にプロジェクトを進めるメンバーと「良いインサイトが得られなければ条件を緩めてインタビューの母数を増やす」など事前に打ち手を決め手おくことがオススメです。
2/ 特定のトピックを深堀りする
- ステップ:質問項目の設計
ユーザーインタビューでよくある設計として「色んなプロジェクトからユーザーに聞きたい項目を募り、1人のユーザーにあらゆるトピックを聞く」といった事があると思います。
しかし、特に検証型のインタビューでは、限られたリソースで検証したい項目の学びをいかに最大化させるかが重要なので、限定したトピックの中で深ぼったり、分解して聞くことで学びを得やすくなりました。
だからこそ、設計段階でUXリサーチに強みを持ったメンバーからFBを頂いたり、1つ1つの大問に対して「何を得れれば良いユーザーインタビューができたかと言えるか?」を言語化しておくことがより大事になってきます。
3/ アウトプットの箱をきっちり作る
- ステップ:質問項目の設計&結果の考察
インタビュー後に得られたファクトやインサイトを参加者でディスカッションしたり言語化する時間があるかと思いますが、指針がないと何に沿って言語化すれば良いかわからなくなります。
その際に、インタビュー実施前の設計段階で、何が埋まっていれば学びがあるインタビューとなるかの箱を作ることが効果的でした。(過去にも作っていましたが、改めて効果を実感しました)
箱を作ることで、とりあえず聞きたいことを聞くのではなく「なぜ、何を、どう知りたいか」の認識を参加者で合わすことができ、設計も逆算的に作ることができ、考察のディスカッションも効率的にできます。(インタビュー時には直接的には聞きません
4/ 解釈・観点をディスカッションする時間のデッドを設けない
- ステップ:考察
ここもインタビュー後の考察段階ですが、ディスカッションする時間をほぼデッドを決めずに議論しました。
先程まで書いていたディスカッションの効率とは逆行しており、時間を設けないことはROI観点で賛否が分かれる部分ではありますが、デッドを設けず、3にも記載したアウトプットの箱以外にも解釈・観点をドキュメントに一旦発散させることで、割と早い段階でインタビューの結果として得たインサイトを言語化することできました。
デッドを設けないことは、一長一短ありますが、結果的に検証型+最初の数回で方向性を定めたいときには有効的な方法でした。
+α/ 意思決定者を巻き込み、誰にでも説明可能な状態を作る
最後の+αとして、インタビューが一通り終わり、社内のステークホルダーにレポーティングする際に役立ったことを記載します。
ユーザーインタビューの特徴として、実施しているメンバーにとってはユーザーの生の声を聞いているので温度感が高く伝わりやすいことがあります。
一方、定量分析と比較すると分かりやすいですが、インタビューの非参加者に伝える際には、定量化されたものよりも抽象的になり学びの受粉が希薄化される傾向があり、UXリサーチのカルチャーがない会社では場合には「それN1の声でしょ?」となってしまう可能性さえあります。
こうなると、どんだけプロセスが良くても、ネクストアクションに繋がりません。ここで、有効だったことは
- 意思決定者(今回はPO)を巻き込む
- スライドで一連のプロジェクトからユーザーインタビューで得られたインサイトを可視化し、誰にでも説明可能な状態を作る
でした。
意思決定者を巻き込む
PO(おでん好きの@tnkdaito)は今イシューを任せてくれた方でもあったため、プロジェクトの進行具合は適宜共有していましたが、インタビュー時には、よりレポーティング頻度を上げたり、一緒にインタビューに出てもらったり、考察のディスカッションにも参加してもらうことで、得られたインサイトを限りなく同じ温度感で伝えることできました。
誰にでも説明可能な状態を作る
プロジェクト進行の最初の段階では、公開済みのドキュメントにはなっていたものの、あまりオープンでなかったように思います。
ただ、インタビューが始まった段階で、これまでドキュメントでまとめていたことをスライドに起こし、誰でにも簡単に伝えられる状態を作りました。
わざわざスライドに起こすことに賛否はあると思いますが、経験上、作成したドキュメントを1つ1つ丁寧に読んでくれることはありません。かといって、結論だけ書いてあっても納得感は醸成されず意思決定に至りづらいので
- 図式化し、誰でにも簡単に伝わる状態・型化を作る(スライド集約がオススメ)
- 詳細を把握したいメンバー向けにドキュメントへの導線を作る
こうすることで、各ステークホルダーにレポーティングする際にも伝えやすく、意思決定にも繋がりやすいと思っています。
さいごに
ここまでユーザーインタビューから最大限学びを得るために実施し、有効だったTIPSについて書きました。現在インタビューを日常的に実施している方、これから実施予定の方のお役に立てれば幸いです。
また、冒頭に触れたインタビューのテクニックについては専門技術としてブラッシュアップ中ですが、インタビューというのは結局は人同士の対話の上で成り立っていることなので、まずは対話を大事にすることが重要で、そこから学びを得るための一つのコツのように感じるようになりました。
今回得られたインサイトが、どのように結果として現れ、また新たな学びを得られることが今から楽しみでなりません。
以上、Retty Part1 Advent Calendar 2022 の18日目の担当Postでした。